漂流
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窓際

中原りんかく

もしもね、わたしが犬になっても愛していてほしいの、もうすぐわたし、意識があたらしいおもさをつつんで、ちょうど一匹の犬みたいになるの。

犬みたいに昼。犬みたいにくすぐったがり。



琺瑯の器が割れて、

河口の水草が花を咲かせる

いっせいに拡散したほそい毛が大地を沿う


ほそい毛をよすがとして、わたしたちは生活をはじめた、わたしは流れながら、うまれてくるまえのいのちの、ひとつひとつになまえをつける、いくつもの家があかりを消し、その度に震える文明の声




何千もの季節を介したまっ白いひかりを浴びる犬、

の毛並み、

ひとみを介してひかりははじめて白く


どこかであなたを愛したことがある気がしてならないわん

©漂流