漂流
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春の日のうた

辻井紀代彦

なんてうららかな春の日に

何億光年の宇宙にたたずむ

小さな星のおもてがぴくりと揺らげば

僕たちは死なないはずがないということを思い知らされた

空の澄んだ春の日に

何もかも揺るがせにされて仰いだ

青々しい天のもとに帰れば

映るテレビに

十分に

人の死に絶えていくのがわかった


八十隈に山の遮るみちのくに絶えにし者のうらむ声聞く

晴るる天春なりぬれば風吹かる松が枝にこそ蝶の安らへ




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